2026.02.27
やすみの話

一般企業の休日といえば、日曜・祝日、そして土曜。
仕事をする者にとって、週休二日制はすでに当たり前のものになって久しい。
我々が働く建設現場にも、行政の指導により、少しずつ週休二日の流れが入ってきている。

休みが増えること自体に異論はない。
納得できないのは、
休みが増えても、工期は変わらないという点だ。
現場は土日休み。しかし工期は従来通り。
足りなくなった日数は、
「各社で増員して対応してください」
「請け負った以上、当然ですよね」
という話になる。
天候不良で工程が遅れても関係ない。
とにかく、決められた日までに終わらせること。
遅れれば、次の仕事はない。
なぜ、休みが増えても工期が変わらないのか。
理由の一つは、金額の問題だ。
週休二日になれば、本来は
・工期の延長
・人員の増加
・それに伴うコスト増
が必要になる。

しかし現実には、工事金額は以前と大きく変わらない。
発注者はこれまでの相場で発注する。
元請けも、その条件の中で受注する。
そして下請けもまた、
「その金額でもやる会社」
として仕事を受ける。
受注競争の中で、条件を理由に断れば、仕事は他社に流れる。
結果として、
金額は変わらない。
工期も変わらない。
しかし、休みだけが増える。
その不足分を、現場の工夫と人の負担で埋めているのが現実だ。
発注者にとって重要なのは、引き渡し日に完成していることだけだ。
契約はその前提で結ばれている。
遅れれば違約金。
そのプレッシャーは、必然的に現場へ降りてくる。

そしてよくあるのが、
前半の遅れや調整不足のツケが、後半に一気に押し寄せるパターンだ。
しかし現場は、あくまで土日休み。
そこで、ゼネコン職員だけ交代で週休二日というウルトラC。
元請けとしては労働基準を守っている。
制度上の問題もない。
だが、下請けはどうか。
人員に余裕のある会社なら対応できる。
しかし、少人数の会社ではそうはいかない。
結果として、土日も祝日も関係なくなる。
働き方改革により、下請けにも36協定や有給取得など、以前とは違う管理が求められている。
それ自体は必要なことだと思う。
だが現実は、
工期は短いまま
日数は減る
人を増やせと言われる
休みは確保しろと言われる
その矛盾のしわ寄せが、一番下に集まってくる。
休みを増やすことが問題ではない。
問題なのは、工程はそのままで、負担だけ下に回す構造だ。
週休二日を本気で進めるなら、工期の考え方そのものを変えなければ意味がない。
制度だけを変えて、現場の条件を変えなければ、
負担は見えにくいところに移動するだけだ。
そしてその行き先は、決まって現場の一番下になる。
働き方改革は、いいことだと思う。
週休二日。残業規制。有給取得。
書類の上では、現場の環境はどんどん良くなっている。
元請けも休んでいる。管理体制も整っている。
制度も守られている。
問題はない。
ただ一つ、現場の人間が休めていないだけだ。
工期は変わらない。金額も変わらない。
でも日数だけが減る。
足りない分は、
努力でカバー、段取りでカバー、
増員でカバー、休日出勤でカバー
つまり、現場の体力でカバーしている。
制度は守られている。報告書もきれいだ。
だから、この仕組みは、きっと成功しているのだと思う。
ただ、
その成功の上にいるのは、休めている人たちで、
その下にいるのは、休めない人たちだ。
休みが増えたのではなく、
休める人が変わっただけなのかもしれない。

もし本当に現場のための改革を目指すなら、
休みの日数ではなく、あるべき工期と金額を変えるべきだと私は思う。
それが変わらない限り、
これからも現場は、制度に守られながら
制度に追われ続けることになる。
ではまた、どこかの屋上で。
山本
カテゴリ:やべぇ話
2026.02.23
哀愁のコの字切り
以前、アスファルト防水で使うアスファルトコンパウンドを運ぶためのドーコ缶の話を書きました。
今回はウレタン防水の一斗缶の話です。
どのメーカーでもウレタン材料はほぼ100%スチール製一斗缶(18.039L)で出荷されています。
ごく一部、ポリエチレンペール缶+内袋仕様や、ドラム缶など明らかに違う梱包形態を除いて一斗缶流通が普通としておきます。
塗膜防水なので、材料を持ち運ぶのは一斗缶かバケツになりますが、小分け以外は混ぜた材料を、天端を切ったバケツ代わりの一斗缶に入れて運び、そのまま使用するのが一般的です。
で、その攪拌済み材料の持ち運び用一斗缶をどう作るか。
アスファルトの時に話したドーコ缶作りは、缶の天端を切り取って缶横に穴をあけ、番線を通して持ち手を作る製作方法でした。
ウレタン防水の一斗缶の切り方。これが業界では地味に分かれます。
・コの字切り。ほぼ大方の防水屋さんはこのスタイル。
・塗装屋さん風の切り欠き持ち手。
・独自進化型。
1-2回使用すると、缶に残った材料が硬化し始めて使えなくなり、そのまま潰して捨てるだけの運命ですが、それだけに使用時の切り欠きは職人の性格や現場の思想が出ます。
※現場の基本はあくまでも上位業者のやり方に従う。
それが普通です。
最もポピュラーな「コの字切り」は、一斗缶の特性上持ち手が斜めになります(持ち手は対角線上のラインに付いているため)。

そのため運搬時に人差し指側へ負担が集中します。
慣れれば問題ないと言われればそれまでですが、斜め持ちになることで微妙に体勢が不安定になる。
長距離の運搬だと普通に手が痛いです。
←ペンキ屋さんスタイル① ペンキ屋さんスタイル②→

ペンキ屋さんスタイル①のように、斜め持ちが嫌で上部を追加で切り欠いて持ち手を作る業者もいます。持つのは楽になりますが持ち手の位置が高くなる。
平場では大差ありませんが、段差や障害物の多い現場、階段では少し扱いづらくなります。
ペンキ屋さんスタイル②は重心が高くなるため割と安定して持ち運ぶことが可能です。理想的な持ち手ともいえるでしょう。
いずれもペンキ屋さんスタイルは切り欠きの手間はもちろん、切り欠いた部分でケガをしたり、フタ裏などの汚れを毎回きれいにしないと持つたびに軍手を汚すことになる。
その手であちこち触れてしまう可能性もある。
慣れている人は問題ないかもしれませんが、ここは欠点といえます。
どれも一長一短です。
弊社は三角切りを採用しています。

あまり見かけませんが、この切り欠きを採用しているのは意味があります。
持ち手が水平になることで手の痛みを軽減し、運搬が少しだけ楽になる。
ウレタンを流すとき誰もが缶の角から出しますが、三角切りだとその動きが安定する。
持ちやすく、流す位置の視点もブレにくい。
他の切り方の弱点をある程度補ってくれます。
もちろん欠点もあります。
残した三角部分に攪拌機が当たりにくく、フチに未混合が残る可能性がある。
ただそれは攪拌時にゴムベラやスクイージーでしごけば済む話で、ウレタン防水材を扱う以上どんな切り方でも必要な作業の一つです。
三角切りによる弊害は今のところこれくらいですが、他にもっと良い方法があるかもしれない。
どれが絶対正義とも言い切れません。
攪拌についてはまた別の機会に。
ウインチで缶を吊る場合。
最近の現場は厳しいので、そもそも口を切った缶を吊って~はご法度になりつつありますが、それは置いといて。

経験談ですが、一斗缶用の吊り金具を使って荷揚げしたとき、足場上で金具から缶を抜く作業でも、僅かながら切り欠き形状による効率の差は出ます。
これは防水の施工優劣を語りたいわけではありません。
どれが正しい、どれが一番だという結論を付けたいわけでもないです。
少子高齢化。人材不足。
どの業界も同じですが、昔ながらのやり方を「これが正解」と固定観念化するだけでなく、
こうすれば職人は少し楽になるんじゃないか。
こうすれば効率が上がるんじゃないか。
こうすれば経験の浅い人でも安定して仕事ができるんじゃないか。
そういうことを小さい部分から考えるほうが、これからの時代は現実的だと思っています。
一斗缶の切り方ひとつの話です。
でも現場は、小さなことの積み重ねでできています。
ではまた、どこかの屋上で。
山本
今回はウレタン防水の一斗缶の話です。
どのメーカーでもウレタン材料はほぼ100%スチール製一斗缶(18.039L)で出荷されています。
ごく一部、ポリエチレンペール缶+内袋仕様や、ドラム缶など明らかに違う梱包形態を除いて一斗缶流通が普通としておきます。
塗膜防水なので、材料を持ち運ぶのは一斗缶かバケツになりますが、小分け以外は混ぜた材料を、天端を切ったバケツ代わりの一斗缶に入れて運び、そのまま使用するのが一般的です。
で、その攪拌済み材料の持ち運び用一斗缶をどう作るか。
アスファルトの時に話したドーコ缶作りは、缶の天端を切り取って缶横に穴をあけ、番線を通して持ち手を作る製作方法でした。
ウレタン防水の一斗缶の切り方。これが業界では地味に分かれます。
・コの字切り。ほぼ大方の防水屋さんはこのスタイル。
・塗装屋さん風の切り欠き持ち手。
・独自進化型。
1-2回使用すると、缶に残った材料が硬化し始めて使えなくなり、そのまま潰して捨てるだけの運命ですが、それだけに使用時の切り欠きは職人の性格や現場の思想が出ます。
※現場の基本はあくまでも上位業者のやり方に従う。
それが普通です。
最もポピュラーな「コの字切り」は、一斗缶の特性上持ち手が斜めになります(持ち手は対角線上のラインに付いているため)。

そのため運搬時に人差し指側へ負担が集中します。
慣れれば問題ないと言われればそれまでですが、斜め持ちになることで微妙に体勢が不安定になる。
長距離の運搬だと普通に手が痛いです。
←ペンキ屋さんスタイル① ペンキ屋さんスタイル②→

ペンキ屋さんスタイル①のように、斜め持ちが嫌で上部を追加で切り欠いて持ち手を作る業者もいます。持つのは楽になりますが持ち手の位置が高くなる。
平場では大差ありませんが、段差や障害物の多い現場、階段では少し扱いづらくなります。
ペンキ屋さんスタイル②は重心が高くなるため割と安定して持ち運ぶことが可能です。理想的な持ち手ともいえるでしょう。
いずれもペンキ屋さんスタイルは切り欠きの手間はもちろん、切り欠いた部分でケガをしたり、フタ裏などの汚れを毎回きれいにしないと持つたびに軍手を汚すことになる。
その手であちこち触れてしまう可能性もある。
慣れている人は問題ないかもしれませんが、ここは欠点といえます。
どれも一長一短です。
弊社は三角切りを採用しています。

あまり見かけませんが、この切り欠きを採用しているのは意味があります。
持ち手が水平になることで手の痛みを軽減し、運搬が少しだけ楽になる。
ウレタンを流すとき誰もが缶の角から出しますが、三角切りだとその動きが安定する。
持ちやすく、流す位置の視点もブレにくい。
他の切り方の弱点をある程度補ってくれます。
もちろん欠点もあります。
残した三角部分に攪拌機が当たりにくく、フチに未混合が残る可能性がある。
ただそれは攪拌時にゴムベラやスクイージーでしごけば済む話で、ウレタン防水材を扱う以上どんな切り方でも必要な作業の一つです。
三角切りによる弊害は今のところこれくらいですが、他にもっと良い方法があるかもしれない。
どれが絶対正義とも言い切れません。
攪拌についてはまた別の機会に。
ウインチで缶を吊る場合。
最近の現場は厳しいので、そもそも口を切った缶を吊って~はご法度になりつつありますが、それは置いといて。

経験談ですが、一斗缶用の吊り金具を使って荷揚げしたとき、足場上で金具から缶を抜く作業でも、僅かながら切り欠き形状による効率の差は出ます。
これは防水の施工優劣を語りたいわけではありません。
どれが正しい、どれが一番だという結論を付けたいわけでもないです。
少子高齢化。人材不足。
どの業界も同じですが、昔ながらのやり方を「これが正解」と固定観念化するだけでなく、
こうすれば職人は少し楽になるんじゃないか。
こうすれば効率が上がるんじゃないか。
こうすれば経験の浅い人でも安定して仕事ができるんじゃないか。
そういうことを小さい部分から考えるほうが、これからの時代は現実的だと思っています。
一斗缶の切り方ひとつの話です。
でも現場は、小さなことの積み重ねでできています。
ではまた、どこかの屋上で。
山本
カテゴリ:聞く意味が無い話
2026.02.19
実のない防水話
① それっぽいけど何も言ってない話
防水ってね、結局“水”なんです。
水は正直ですから。
嘘はつけない。
実は、建物も正直なんです。
僕らはね、その間に立つ存在なんですよ。
天気が悪けりゃ、防水屋が儲かる。
水が無けりゃ、防水屋は干からびる。
たまにいますよね。干からびた防水屋。
だいたい肌にツヤがない。
トップコート不足ですね。
② 職人風・無駄に哲学系
防水は腕じゃない。
“姿勢”ッス。
ローラーをどう転がすかじゃない。
ローラーとどれだけ向き合えるかッス。
ローラーに人生を賭けられるかどうかッス。
厚み?
もちろん大事ッスよ。
でもね、本当に大事なのは“心の厚み”ッス。
心の厚みは、スケールで測れない「魂の厚み」スから。
③ やたら横文字を使うタイプ
最近の防水はトータルバランス。
下地コンディション、
マテリアルチョイス、
ランディングトゥモロウ。
フィニッシュクオリティ。
クラッシュバグ。
最終的には“トータルプロデュース”ですねェ。
言うなれば、
レインマネジメントソリューションアウェイ。
ウィーアーグッジョブ。
ノーレインノーライフ。
チェケラ。ポンポンポーン!
④ SNSでバズりそうで何も言ってない系
【知らないと損】
防水には“3つの真実”があります。
動画の最後にその秘密が・・・?
① 水は上から来る
② 水は下にも回る
☝画面を2回タップすると・・・!!
③ 水は気まぐれオレンジロード
タップしても何も起きないこと、実はあまり知られていません。
詳細はまつもと泉のWEBで。
⑤ 経営者風に語るが内容ゼロ
防水っていうのはね、
単なる工事じゃないんですよ。
材料屋から材料を買って工事するんです。
ブリヂストンのタイヤを履いたトラックに材料を積むんです。
それを現場に納入して工事屋が施工する。
現場の監督がにっこり笑って現場写真を撮る。
御施主様が仲間になりたそうにこちらを見ている。
▶ はい
ーいいえ
そういう世界で、我々は工事してるんです。
ええ。
---------------------------------
ではまた、どこかの屋上で。
山本
防水ってね、結局“水”なんです。
水は正直ですから。
嘘はつけない。
実は、建物も正直なんです。
僕らはね、その間に立つ存在なんですよ。
天気が悪けりゃ、防水屋が儲かる。
水が無けりゃ、防水屋は干からびる。
たまにいますよね。干からびた防水屋。
だいたい肌にツヤがない。
トップコート不足ですね。
② 職人風・無駄に哲学系
防水は腕じゃない。
“姿勢”ッス。
ローラーをどう転がすかじゃない。
ローラーとどれだけ向き合えるかッス。
ローラーに人生を賭けられるかどうかッス。
厚み?
もちろん大事ッスよ。
でもね、本当に大事なのは“心の厚み”ッス。
心の厚みは、スケールで測れない「魂の厚み」スから。
③ やたら横文字を使うタイプ
最近の防水はトータルバランス。
下地コンディション、
マテリアルチョイス、
ランディングトゥモロウ。
フィニッシュクオリティ。
クラッシュバグ。
最終的には“トータルプロデュース”ですねェ。
言うなれば、
レインマネジメントソリューションアウェイ。
ウィーアーグッジョブ。
ノーレインノーライフ。
チェケラ。ポンポンポーン!
④ SNSでバズりそうで何も言ってない系
【知らないと損】
防水には“3つの真実”があります。
動画の最後にその秘密が・・・?
① 水は上から来る
② 水は下にも回る
☝画面を2回タップすると・・・!!
③ 水は気まぐれオレンジロード
タップしても何も起きないこと、実はあまり知られていません。
詳細はまつもと泉のWEBで。
⑤ 経営者風に語るが内容ゼロ
防水っていうのはね、
単なる工事じゃないんですよ。
材料屋から材料を買って工事するんです。
ブリヂストンのタイヤを履いたトラックに材料を積むんです。
それを現場に納入して工事屋が施工する。
現場の監督がにっこり笑って現場写真を撮る。
御施主様が仲間になりたそうにこちらを見ている。
▶ はい
ーいいえ
そういう世界で、我々は工事してるんです。
ええ。
---------------------------------
ではまた、どこかの屋上で。
山本
カテゴリ:実のない話
2026.02.16
防水を、防水ってなんだ?
振り向かないことさ。
防水工事という仕事は
普通に暮らしている人にとっては
あまり縁のない世界かもしれない。
屋根の上。
地下の奥。
ふだん目にすることのない場所。
完成してしまえば、評価されることもない。
人の生活は、
「何も起きない」ことが普通。
すきま風もなく、
雨漏りもなく、
床が軋むこともない。
それが当たり前。
だが建物は、
常に過酷な環境にさらされている。
雨や雪、紫外線、寒暖差。そして年月。
それらは確実に建物を劣化させていく。
外壁は、色あせやひび割れで劣化が目に見える。
それゆえ管理もされやすい。
だが、防水は違う。
異常がなければ、
一生、誰の目にも触れないこともある。
建物に異常が起きたとき、初めて存在を知られる。
それが防水という仕事だ。
大工や鳶、左官のような花形の職ではない。
派手さもない。
むしろ地味で、汚れて、嫌がられる
影のような存在。
だが、もし防水がなければ、
建物はあっという間に朽ちていく。
防水は、最後の砦。
完成すると、誰も見なくなる。
それでも、
平穏な日常を当たり前にしてゆくためにある仕事。
防水ってなんだ?
ためらわないことさ。
――串田アキラも、そう歌っていた。
ではまた、どこかの屋上で。
山本
防水工事という仕事は
普通に暮らしている人にとっては
あまり縁のない世界かもしれない。
屋根の上。
地下の奥。
ふだん目にすることのない場所。
完成してしまえば、評価されることもない。
人の生活は、
「何も起きない」ことが普通。
すきま風もなく、
雨漏りもなく、
床が軋むこともない。
それが当たり前。
だが建物は、
常に過酷な環境にさらされている。
雨や雪、紫外線、寒暖差。そして年月。
それらは確実に建物を劣化させていく。
外壁は、色あせやひび割れで劣化が目に見える。
それゆえ管理もされやすい。
だが、防水は違う。
異常がなければ、
一生、誰の目にも触れないこともある。
建物に異常が起きたとき、初めて存在を知られる。
それが防水という仕事だ。
大工や鳶、左官のような花形の職ではない。
派手さもない。
むしろ地味で、汚れて、嫌がられる
影のような存在。
だが、もし防水がなければ、
建物はあっという間に朽ちていく。
防水は、最後の砦。
完成すると、誰も見なくなる。
それでも、
平穏な日常を当たり前にしてゆくためにある仕事。
防水ってなんだ?
ためらわないことさ。
――串田アキラも、そう歌っていた。
ではまた、どこかの屋上で。
山本
カテゴリ:ツマミになる話
2026.02.14
ガラスマットは振り向かない
最近日産シーマのレストアで話題になりましたよね。伊藤かずえサン。
弊社にもごくごく稀に仕事が流れ込んでくる
防水業界の中では異端児の材料
「FRP防水」
(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチックの略称)
今回はそんな防水業界のアウトロー的な
防水についてウンチクを。
船の本体(船底)や、車のバンパー、住宅のユニットバスの湯舟に使用されている、硬ったいプラスチックのようなものがFRPという材料。
割と身近な材料ですよね。
船などの工業製品は、型にFRPを塗り付け
ガラスマットを敷きこんで作り上げる。
硬化後、型から外せば商品の完成!
防水のFRPも、そんな工業製品の工程と全く同じで
コンクリートや木下地の上に直に塗り貼りしていきます。

FRPの特徴は
軽くて強い。鉄の約1/5、アルミの約1/2の重さで
金属並みの強度を持つ。
金属と異なり腐食しないため、水回りや
屋外での耐久性が高い。
自由な成形性で、複雑な形状や
大型の製品を一体成形できる。
紫外線や雨に強く、電波を通す特性を持つ
(ガラスマットの場合)
工業製品と防水の違いは
防水には「型」という概念がないので
仕上がりは塗りこんだ状態の表面側になること。
船の内側を触れたことある方は分かると思いますが
ガラスマットの質感がそのまま感じられる
ザラついた側面側が仕上がりなんです。

木造建築のバルコニーなどで多く採用されているFRP防水の場合、表面にザラつきが多くてはダメなので、厚めに塗り付けたり、ザラつきを機械で表面研磨して出来るだけツルペタに仕上げるのがFRP防水の定石。
防水としての評価も高く、仕上がりも美しいので
一時爆発的に流行した防水工法で、現在でも
ハウスメーカーはよくFRP防水を採用されています。
船底やプールにも使われるくらいだから
これほど最強の防水はほかにないんジャマイカ!?
大抵のFRP防水を紹介するページやSNSを見ると
ここまでの情報しか記載しておらず、
その内容を見る素人は「FRP防水って最強じゃね?」と錯覚してしまいますね。

実は、FRPはその硬ったい性質のせいで、躯体の微妙な動きに弱く、
幹線道路沿いなどに建てられた揺れの多い建物だと「建物の揺れ」に追従できずにヒビ割れや剥離が生じやすい欠点があります。
施工した職人の技量に差も出る事象ですが
寒暖の差でもFRPは割れや剥離を起こしがちです。
そんな割れねぇよアホか!
と思ったそこの防水職人さん。あなたは井の中の蛙。
もう一つの欠点が
「FRP防水の改修工事にはFRP防水しか効かない」点。
何かしら事情があって
「改修工事はFRP以外の防水にしたいな」
と思っても難点があること。
以前はFRP防水下地の建物の改修見積もりは
既存FRP防水撤去か、
既存FRP防水と何かしらの絶縁を計画しなければ他の防水を被せられないことで有名でした。
近年の技術開発で
FRPの上にもアスファルト系貼り防水や
ウレタン防水などの改修工事が可能になりましたが
工程が増え施工価格も高くなる上に
お互いの材料の相性は◎ではなく〇程度。
↑ここ、非常に大事なところです。テストに出ます。
大体の防水屋さん、材料屋さんに相談すると
「あぁ~・・・」と表情を曇らせ
苦々しく「まぁ、出来ますよ」とたぶん大丈夫系の反応をされます。
実際に扱ったり、その前後の異種防水格闘技に参加したことがない業者ほど自信満々に安請け合いしがちです。
そして経年劣化したFRP防水の浮きや割れは、再接着は不可能です。
浮いている部分は完全撤去しなければ更なる剥離を呼び込み、その後の施工不良に繋がりかねません。
ここ適当な解釈で改修工事すると、そりゃもう街は大騒ぎ。
「One More Chance」は無いんです(皮肉
施工は正論の理屈だけでは完結しません。
実際の現場には、数字や見た目以上にさまざまな事情もあります。
のちのち何かと不都合を引き起こしやすい
手の掛かるわがまま娘・・・いや
厄介な防水が「FRP防水」と、
私は捉えています。
異論は受け付けます(受けるんかい)
ではまた、どこかの屋上で。
山本
※硬い=硬ったいと表現しています念のため
弊社にもごくごく稀に仕事が流れ込んでくる
防水業界の中では異端児の材料
「FRP防水」
(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチックの略称)
今回はそんな防水業界のアウトロー的な
防水についてウンチクを。
船の本体(船底)や、車のバンパー、住宅のユニットバスの湯舟に使用されている、硬ったいプラスチックのようなものがFRPという材料。
割と身近な材料ですよね。
船などの工業製品は、型にFRPを塗り付け
ガラスマットを敷きこんで作り上げる。
硬化後、型から外せば商品の完成!
防水のFRPも、そんな工業製品の工程と全く同じで
コンクリートや木下地の上に直に塗り貼りしていきます。

FRPの特徴は
軽くて強い。鉄の約1/5、アルミの約1/2の重さで
金属並みの強度を持つ。
金属と異なり腐食しないため、水回りや
屋外での耐久性が高い。
自由な成形性で、複雑な形状や
大型の製品を一体成形できる。
紫外線や雨に強く、電波を通す特性を持つ
(ガラスマットの場合)
工業製品と防水の違いは
防水には「型」という概念がないので
仕上がりは塗りこんだ状態の表面側になること。
船の内側を触れたことある方は分かると思いますが
ガラスマットの質感がそのまま感じられる
ザラついた側面側が仕上がりなんです。

木造建築のバルコニーなどで多く採用されているFRP防水の場合、表面にザラつきが多くてはダメなので、厚めに塗り付けたり、ザラつきを機械で表面研磨して出来るだけツルペタに仕上げるのがFRP防水の定石。
防水としての評価も高く、仕上がりも美しいので
一時爆発的に流行した防水工法で、現在でも
ハウスメーカーはよくFRP防水を採用されています。
船底やプールにも使われるくらいだから
これほど最強の防水はほかにないんジャマイカ!?
大抵のFRP防水を紹介するページやSNSを見ると
ここまでの情報しか記載しておらず、
その内容を見る素人は「FRP防水って最強じゃね?」と錯覚してしまいますね。

実は、FRPはその硬ったい性質のせいで、躯体の微妙な動きに弱く、
幹線道路沿いなどに建てられた揺れの多い建物だと「建物の揺れ」に追従できずにヒビ割れや剥離が生じやすい欠点があります。
施工した職人の技量に差も出る事象ですが
寒暖の差でもFRPは割れや剥離を起こしがちです。
そんな割れねぇよアホか!
と思ったそこの防水職人さん。あなたは井の中の蛙。
もう一つの欠点が
「FRP防水の改修工事にはFRP防水しか効かない」点。
何かしら事情があって
「改修工事はFRP以外の防水にしたいな」
と思っても難点があること。
以前はFRP防水下地の建物の改修見積もりは
既存FRP防水撤去か、
既存FRP防水と何かしらの絶縁を計画しなければ他の防水を被せられないことで有名でした。
近年の技術開発で
FRPの上にもアスファルト系貼り防水や
ウレタン防水などの改修工事が可能になりましたが
工程が増え施工価格も高くなる上に
お互いの材料の相性は◎ではなく〇程度。
↑ここ、非常に大事なところです。テストに出ます。
大体の防水屋さん、材料屋さんに相談すると
「あぁ~・・・」と表情を曇らせ
苦々しく「まぁ、出来ますよ」とたぶん大丈夫系の反応をされます。
実際に扱ったり、その前後の異種防水格闘技に参加したことがない業者ほど自信満々に安請け合いしがちです。
そして経年劣化したFRP防水の浮きや割れは、再接着は不可能です。
浮いている部分は完全撤去しなければ更なる剥離を呼び込み、その後の施工不良に繋がりかねません。
ここ適当な解釈で改修工事すると、そりゃもう街は大騒ぎ。
「One More Chance」は無いんです(皮肉
施工は正論の理屈だけでは完結しません。
実際の現場には、数字や見た目以上にさまざまな事情もあります。
のちのち何かと不都合を引き起こしやすい
手の掛かるわがまま娘・・・いや
厄介な防水が「FRP防水」と、
私は捉えています。
異論は受け付けます(受けるんかい)
ではまた、どこかの屋上で。
山本
※硬い=硬ったいと表現しています念のため
カテゴリ:トイレで読みたい話
2026.02.10
目地にまつわるエトセトラ

立上を貼っている後藤サン。
この現場は㎡数が小さいだけに、3人も居ればあっという間に終わっちゃいます。
貼ったケツから、端末のガムシールを塗り、仕上げのシルバーコートを塗布していきます。
役割分担は特にないけど、誰が何をすればいいのか理解し、流れるように動けるのが職人。

田島ルーフィング製のマットシルバーは高級品だけあって綺麗!
最近は塗料の価格高騰が激しいので、田島ブランドでも高く感じなくなりました。
トーチをやる上で、職人・会社によって違いが出るのが
切り貼りする部位。
立上の床・天端の出隅端部を斜めカットをする人しない人。
同じく、立上の出隅入隅の貼り仕舞いの処理の違い。
また、巻き上げという床から立上まで一気に貼り上げるやり方。
シートの目地を、炙りで引く人引かない人。
「立上は全部切り貼りで」という会社も。
田島ルーフィングのメーカー推奨はいつからか全部切り貼り推奨になったようです。
しかも先張りで。
いち職人がが思うのは、
メーカーの言うことが大正義と思ってはいけません。
メーカーは材料の保証はしてくれますが、施工の保証はしてくれないんです。
施工した側がすべての責任を背負うのが日本の防水の常識。
世の中の防水職人さん!施工を疑問に思ったらきっとあなたが正解だよ!!
メーカー側や国交省仕様に、事例による事細かな貼り方なんか載っていません。
要は、水仕舞がきちんとしていれば、目地の入り方なんてどうでもよいんです。
縦だろうと横だろうと斜めだろうと。
防水は水が漏らないのが正義ですから。
長い目で見れば、シートのつなぎ目が無い方が
切れたり剝がれたりという事故を防げるのは至極理屈通りの話。
漏らなきゃどうでもいいですが、防水屋的に意外とどうでもよくないのがキモ。

立上床の斜めカットは多少の手間とコストが掛かるんですけどね。
この方が見た目が綺麗。
炙り目地引きも会社によって違います。
熱アスファルト出身の職人は目地部の剥離が怖いので
目地を引いて安心したいだけなんです。見た目的にも。
メーカーは目地を必要としていませんし
キチンとあんこ出して炙れば目地なんて引かなくても良いんです。
ただ、あんこを出すことを意識しすぎて炙りすぎると
表面が真っ黒に焦げてしまうのが難点です。
「トーチなんて焦がしてナンボだよ」
という輩も居ますが、いやいやいや、商品ですから。
防水性能が一番大事だけど、見た目だって大事でしょうが!
子供が食べてる途中でしょうが!
ではまた、どこかの屋上で。
山本
カテゴリ:トイレで読みたい話
2026.02.06
衝 動
改修調査依頼で屋根に上がると、
「よくこれで漏水しないなぁ」
って現場によく出会います。
老朽化の激しい屋根はもちろん、
メンテナンスがされておらず衝撃を受けることもしばしば。
どうしようもないほど壁が落ちていたり

一見、さほど痛んでなさそうな屋根でも

手抜きの防水補修跡が
見事に剥がれ落ちたりしてる現場に出くわします。

平穏そうに見える綺麗な屋根でも

排水ドレンがまりもっこりだったりしますから驚きです。

まりもっこり

ではまた、どこかの屋上で。
山本
「よくこれで漏水しないなぁ」
って現場によく出会います。
老朽化の激しい屋根はもちろん、
メンテナンスがされておらず衝撃を受けることもしばしば。
どうしようもないほど壁が落ちていたり

一見、さほど痛んでなさそうな屋根でも

手抜きの防水補修跡が
見事に剥がれ落ちたりしてる現場に出くわします。

平穏そうに見える綺麗な屋根でも

排水ドレンがまりもっこりだったりしますから驚きです。

まりもっこり

ではまた、どこかの屋上で。
山本
カテゴリ:ツマミになる話
2026.02.02
知らなくてもいいけど知ってたとしても別に誰にも自慢できない防水屋さんの仕事のこと
アス防豆知識「ドーコ」

一斗缶の上部を切り取り、取っ手に番線という建築針金を巻き付けてバケツ状にしたものをドーコという。(ドンコ缶とも呼ぶ)。
溶融釜で溶かしたアスファルトを汲んで持ち歩くための、熱アスファルト防水の基本道具の一つ。
現場にもよるが、平均5-6個のドーコを使用する。
製作はアスファルトプライマーの空き缶を使うのが一般的。他の空き缶を使うと、溶かしたアスファルトを入れた使い始めに悪臭が発生する為、忌み嫌われる。
以下、私が若手時代の話。
取っ手番線取り付けは主に釜屋さん(釜作業専属の職人)が作成することが多い。
完璧の域に達するには少々鍛錬が必要。
ドーコ缶つくりにタラタラ時間が掛かってると
「帰れボケェ!」
と職長に怒鳴られたりする。
ドーコ缶の作りや、メンテ一つで職人の良し悪しが分かると言われていた。
使い古してくると、缶底がアスファルトの熱で冒され膨らんでくる。
こうなると、いつ破損するか危険なので廃棄の目安となる。
また、ドーコは使用しているうちに、冷めたアスファルトがへばりついてだんだん重くなってくる。
溶融釜に缶ごと入れて、このへばりついたアスファルトを溶かしてキレイにすることを俗に
「天ぷら」と呼ぶ。
天ぷらのやり方もその職人によって差があるが、ケレンなどを用いてよりキレイにするのが一般的。
これもまた、モタモタしてて手早くやらないと
「やる気あるンかいボケェ!」
と職長に怒鳴られる。
床貼りのときの合い言葉は「アス1杯ァーイ!」
一杯汲むと重さはだいたい15キロ程度。
馬力のある釜屋さんだと、片手に2杯ずつ4杯を一度に運んだりする。
要領の良い釜屋さんは台車を使って6杯とかガラガラと運んでくるが、あまり余裕ブッコいて釜屋やってたら
床貼り屋さんに超激速度で次々とアスを使われて、くそいじめられるので注意が必要。
昨今はあまり聞かなくなった現場いじめ笑
関西方面や西日本では、柄杓を使わず一斗缶を半分にして使う「半ドーコ」が主流である。
以上、知らなくてもよい豆知識でした。
ではまた、どこかの屋上で。
山本

一斗缶の上部を切り取り、取っ手に番線という建築針金を巻き付けてバケツ状にしたものをドーコという。(ドンコ缶とも呼ぶ)。
溶融釜で溶かしたアスファルトを汲んで持ち歩くための、熱アスファルト防水の基本道具の一つ。
現場にもよるが、平均5-6個のドーコを使用する。
製作はアスファルトプライマーの空き缶を使うのが一般的。他の空き缶を使うと、溶かしたアスファルトを入れた使い始めに悪臭が発生する為、忌み嫌われる。
以下、私が若手時代の話。
取っ手番線取り付けは主に釜屋さん(釜作業専属の職人)が作成することが多い。
完璧の域に達するには少々鍛錬が必要。
ドーコ缶つくりにタラタラ時間が掛かってると
「帰れボケェ!」
と職長に怒鳴られたりする。
ドーコ缶の作りや、メンテ一つで職人の良し悪しが分かると言われていた。
使い古してくると、缶底がアスファルトの熱で冒され膨らんでくる。
こうなると、いつ破損するか危険なので廃棄の目安となる。
また、ドーコは使用しているうちに、冷めたアスファルトがへばりついてだんだん重くなってくる。
溶融釜に缶ごと入れて、このへばりついたアスファルトを溶かしてキレイにすることを俗に
「天ぷら」と呼ぶ。
天ぷらのやり方もその職人によって差があるが、ケレンなどを用いてよりキレイにするのが一般的。
これもまた、モタモタしてて手早くやらないと
「やる気あるンかいボケェ!」
と職長に怒鳴られる。
床貼りのときの合い言葉は「アス1杯ァーイ!」
一杯汲むと重さはだいたい15キロ程度。
馬力のある釜屋さんだと、片手に2杯ずつ4杯を一度に運んだりする。
要領の良い釜屋さんは台車を使って6杯とかガラガラと運んでくるが、あまり余裕ブッコいて釜屋やってたら
床貼り屋さんに超激速度で次々とアスを使われて、くそいじめられるので注意が必要。
昨今はあまり聞かなくなった現場いじめ笑
関西方面や西日本では、柄杓を使わず一斗缶を半分にして使う「半ドーコ」が主流である。
以上、知らなくてもよい豆知識でした。
ではまた、どこかの屋上で。
山本
カテゴリ:聞く意味が無い話
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