2026.03.02
夢見るトーチじゃいられない
熱アスファルト(以下、熱アス)に代わり、日本のみならず全世界で一番流通している
「改質アスファルトトーチ防水」

その話の前提として、まず熱アスという作業の話を。
熱アスは、固体のアスファルトコンパウンドを溶解釜に入れ、
強力な灯油バーナーで液状になるまで溶かし、
溶けたアスファルトを接着剤としてアスファルトシートを貼り付けていく工法です。
固体のアスファルトコンパウンドが液状になるのは約280度前後。
そこまで溶解すると、臭いと煙が発生して周囲に広がります。
道路のアスファルト工事と似た、あの独特の工業臭。
周囲に住宅やマンション、ビルが密集していると、苦情が出ることもあります。
また、熱アスは何層も積層して防水層を形成する工法です。
多くの資材を使用し、溶解釜の上げ下ろしにはクレーンも必要になります。
近年は、積層を減らす冷熱併用工法や、田島ルーフィングでいう「BANKS(バンクス)」のように、熱アスとトーチ防水の良いところを組み合わせた仕様などもあります。
温故知新。
現代は多種多様な工法に恵まれた時代ですね。
それでも、所謂お役所物件や自衛隊関連の工事では、昭和から仕様が変わらず、昔ながらの熱アスが採用されているケースもあります。
――――――――――――――――――――――――――――――
話をトーチ防水に戻します。
トーチ防水とは、
アスファルト防水シートの裏面に、改質アスファルトコンパウンドが工場の段階で均一に塗布されており、
ガスバーナーで炙ることでそのアスファルトが溶け出し、それを糊として貼り付ける工法です。

貼り付けにはプロパンガスを使用します。
音は大胆で、ジェットエンジンのような爆音が出ますが、臭いは熱アスの1/10程度まで軽減されます。
材料以外で必要なのはプロパンガスボンベのみ。
一般的には10kgボンベを使用し、手で運搬できるため作業の乗り込みや撤収が早いのも特徴です。
ガスバーナーを使用する以上、火傷や火災の危険性はあります。
熱アスより施工性が高く、工程も少なく、保証は熱アスと同等。
価格は熱アスの半分以下。
まさに夢のような防水工法として、ドイツをはじめヨーロッパから世界に広まりました。
バーナーさえあれば施工できる手軽さから、日本でも1990年代から急速に普及しました。
防水専門職だけでなく、他業種もトーチ防水を扱うようになります。
しかしトーチ防水は、炙りすぎるとアスが溶けすぎて油分が飛び、接着性も大幅に下がり、シートはただの紙と化してしまいます。
逆に、炙りすぎを恐れて適当な火量で炙らなければ、接着機能を果たしません。
シートの炙り具合は、天候・気温・施工場所など様々な環境に左右されます。
材料メーカー側からは「裏面印字が見えなくなるまで炙る」程度の指定はありますが、溶け具合に対する細かく具体的な数値指示はありません。
貼りの理屈は様々。多種多様。
つまり、炙り加減は職人任せです。
この、シートをあぶる難しさ。

もちろん、ローラーでの圧着なども関係します。
ですがそれ以前に、どの程度の炙りでアスが水密を保ち、防水として機能するのか。
その見極めの難度が極めて高い。
見た目には、温める程度の炙り方でも張り付いて見えるから困りもの。
手軽にできる分、トーチ黎明期には施工者の理解不足や経験不足による接着不良が多発しました。
――――――――――――――――――――――――――――――
当時は建設業全体の価格競争も重なり、業界全体の品質低下を招いた時期でもあります。
熱アスは少なくとも2層以上の積層が基本。
一方トーチは一層でも熱アスと同等の保証。
しかも価格は半分以下。
建築主から歓迎されるのは当然でした。
そしてバブル崩壊後、乱立した防水業者による更なる価格破壊。
未熟な作業員による施工不良、漏水事故。
2000年代初期には、ゼネコンからの信頼を失い、トーチ防水には「安かろう悪かろう」のイメージが定着します。
――――――――――――――――――――――――――――――
それでも市場シェアは拡大しました。
2010年を過ぎには、技術のない業者はどんどん淘汰され
施工レベルは現在の水準まで引き上げられました。
とはいえ、端部処理や重ねの圧着など、積層が少ない分、職人に求められる精度は依然として高いままです。
アスを流せば防水として機能する熱アスとは違い、
炙れば防水、という単純な品物ではないのが、トーチ工法です。
――――――――――――――――――――――――――――――
「♪もっと激しくシート炙りたい
No No それじゃ貼りつかない
素敵な火で炙りたい
No No それじゃ物足りない
現場の中、今も 見つめてる
バブルの私がいる
夢見るトーチじゃいられない」
ヘイ!
ではまた、どこかの屋上で。
山本
「改質アスファルトトーチ防水」

その話の前提として、まず熱アスという作業の話を。
熱アスは、固体のアスファルトコンパウンドを溶解釜に入れ、
強力な灯油バーナーで液状になるまで溶かし、
溶けたアスファルトを接着剤としてアスファルトシートを貼り付けていく工法です。
固体のアスファルトコンパウンドが液状になるのは約280度前後。
そこまで溶解すると、臭いと煙が発生して周囲に広がります。
道路のアスファルト工事と似た、あの独特の工業臭。
周囲に住宅やマンション、ビルが密集していると、苦情が出ることもあります。
また、熱アスは何層も積層して防水層を形成する工法です。
多くの資材を使用し、溶解釜の上げ下ろしにはクレーンも必要になります。
近年は、積層を減らす冷熱併用工法や、田島ルーフィングでいう「BANKS(バンクス)」のように、熱アスとトーチ防水の良いところを組み合わせた仕様などもあります。
温故知新。
現代は多種多様な工法に恵まれた時代ですね。
それでも、所謂お役所物件や自衛隊関連の工事では、昭和から仕様が変わらず、昔ながらの熱アスが採用されているケースもあります。
――――――――――――――――――――――――――――――
話をトーチ防水に戻します。
トーチ防水とは、
アスファルト防水シートの裏面に、改質アスファルトコンパウンドが工場の段階で均一に塗布されており、
ガスバーナーで炙ることでそのアスファルトが溶け出し、それを糊として貼り付ける工法です。

貼り付けにはプロパンガスを使用します。
音は大胆で、ジェットエンジンのような爆音が出ますが、臭いは熱アスの1/10程度まで軽減されます。
材料以外で必要なのはプロパンガスボンベのみ。
一般的には10kgボンベを使用し、手で運搬できるため作業の乗り込みや撤収が早いのも特徴です。
ガスバーナーを使用する以上、火傷や火災の危険性はあります。
熱アスより施工性が高く、工程も少なく、保証は熱アスと同等。
価格は熱アスの半分以下。
まさに夢のような防水工法として、ドイツをはじめヨーロッパから世界に広まりました。
バーナーさえあれば施工できる手軽さから、日本でも1990年代から急速に普及しました。
防水専門職だけでなく、他業種もトーチ防水を扱うようになります。
しかしトーチ防水は、炙りすぎるとアスが溶けすぎて油分が飛び、接着性も大幅に下がり、シートはただの紙と化してしまいます。
逆に、炙りすぎを恐れて適当な火量で炙らなければ、接着機能を果たしません。
シートの炙り具合は、天候・気温・施工場所など様々な環境に左右されます。
材料メーカー側からは「裏面印字が見えなくなるまで炙る」程度の指定はありますが、溶け具合に対する細かく具体的な数値指示はありません。
貼りの理屈は様々。多種多様。
つまり、炙り加減は職人任せです。
この、シートをあぶる難しさ。

もちろん、ローラーでの圧着なども関係します。
ですがそれ以前に、どの程度の炙りでアスが水密を保ち、防水として機能するのか。
その見極めの難度が極めて高い。
見た目には、温める程度の炙り方でも張り付いて見えるから困りもの。
手軽にできる分、トーチ黎明期には施工者の理解不足や経験不足による接着不良が多発しました。
――――――――――――――――――――――――――――――
当時は建設業全体の価格競争も重なり、業界全体の品質低下を招いた時期でもあります。
熱アスは少なくとも2層以上の積層が基本。
一方トーチは一層でも熱アスと同等の保証。
しかも価格は半分以下。
建築主から歓迎されるのは当然でした。
そしてバブル崩壊後、乱立した防水業者による更なる価格破壊。
未熟な作業員による施工不良、漏水事故。
2000年代初期には、ゼネコンからの信頼を失い、トーチ防水には「安かろう悪かろう」のイメージが定着します。
――――――――――――――――――――――――――――――
それでも市場シェアは拡大しました。
2010年を過ぎには、技術のない業者はどんどん淘汰され
施工レベルは現在の水準まで引き上げられました。
とはいえ、端部処理や重ねの圧着など、積層が少ない分、職人に求められる精度は依然として高いままです。
アスを流せば防水として機能する熱アスとは違い、
炙れば防水、という単純な品物ではないのが、トーチ工法です。
――――――――――――――――――――――――――――――
「♪もっと激しくシート炙りたい
No No それじゃ貼りつかない
素敵な火で炙りたい
No No それじゃ物足りない
現場の中、今も 見つめてる
バブルの私がいる
夢見るトーチじゃいられない」
ヘイ!
ではまた、どこかの屋上で。
山本
カテゴリ:身内しか笑えない話
RSS 2.0